住宅ローン控除の拡充にひそむ罠。
先日の新聞各紙に、消費税の増税をにらみ、今後の政府の対応に関する記事が掲載されました。政府は2013年12月末に期限切れとなる住宅ローン減税を延長し拡充する検討に入った。税額控除の対象となる住民税の控除枠を広げ、所得税が少ない人でも減税制度の控除を使い切れるようにする。主に平均的な所得水準の世帯が住宅を購入しやすい環境を整備。14年4月を予定する消費増税時の住宅消費の冷え込みを抑え、景気の下支えを狙う。
既に現在、各ハウスメーカーは少々悪質に感じるトークも含めて、駆け込み需要目当てで奔走しています。雑誌や新聞記事でさえ、今買わないとこれだけ損をしますよと煽ります。
現在の救済案(?)がそのまま通過するとしたら、『住まいを購入する時は消費税を負担してもらうけれど、住宅ローンを借りる人は、後からゆっくり所得税と住民税の負担を減らしてあげるから勘弁してね。』という感じの案ですから、『借金奨励政策』と名前を変えてもいいのではないでしょうか?
ただし以前、旧住宅金融公庫が“段階金利”という住宅ローンを提供した時の教訓を忘れてはいけません。段階金利はその名の通り、返済開始から一定期間経過は金利を低く抑え、後に金利が上昇する(10年後に金利が1%上昇する、二段階金利)という商品でした。一見良さそうに見えますが、住宅ローンを支払う人の収入が上昇していくことが前提条件でしたので、現在のように収入が下がっていく傾向にあると、毎月の返済額が自動的に上がるのに、収入が減っているというダブルパンチの状態になります。
同じように、今回のローン控除の拡大はローンの返済額こそ変わりませんが、10年経てば所得税・住民税の控除が減らされますので、結果として手取り収入(可処分所得)が減ることに変わりはありません。
住宅金融公庫の段階金利が始まり10年経過したとき、支払額が上昇することをやっと思い出したが、返済できずに住宅を手放す方が大勢出て、社会問題化しました。控除をしてもらえるのはありがたいですが、同じような間違いを繰り返さないような手立てを講じておかないといけません。
ライフプランをしない住宅購入は、設計図の無い住宅建築のようなものです。