ウサギ小屋からウサギ小屋へ。
私が子供のころ、欧米先進国に比べて日本の住宅は「うさぎ小屋」だと揶揄されていると報道されていました、子供心に「我が家にうさぎは住んでいないから問題だ。」と母に訴えて何故か本当にうさぎを飼ってもらった記憶があります。今にすれば笑い話ですが、最近は少々様子が違うようです。
住宅金融公庫のデータによると昭和56年には全国の延床面積の平均は107㎡(約32.3坪)だったのが、平成8年には144㎡(約43.5坪)となりピークを迎え、平成16年には134㎡(約40.5坪)と推移しています。いわゆるバブル景気のころまでは、住宅の延床面積は上昇していたのですが、その後は低下の一途です。
平成8年のピーク時で比較すると、日本の住宅の延床面積は既に「うさぎ小屋」のレベルを脱し、世界と比較しても決して狭い家ではありませんでした。ところが今また日本の家は「うさぎ小屋」に向かっています。
ではどうして日本の家は小さくなってしまったのでしょうか?建築費の高騰・所得の低下・核家族化への移行・マンションの増加、等々いろいろ考えられますが、真相を調べたデータが存在する様子がないので不明です。以降は私の勝手な推測ですが、平成8年ごろを目安に一人ないしは二人の世帯が急増したのが原因ではないかと思います。
世帯人数の低下が延床面積の低下の原因であるならば、当然の結果かもしれません。私が子供のころ大家族は決して珍しくはありませんでした、ゆえに大きな家に憧れ、必要を感じたのでしょうが、現在では一部の都心部において、一世帯の平均人数が3人を切ってしまった状況なので、既に日本には大きな家は必要なくなってしまったのです。
しかし、考えてみれば、小さい家だからといって、嘆くことはないのです。むしろよい事のほうが多いと思います、日本のような狭い国では、小さい家の方が合理的です。
かつては、寝るのも食べるのも同じ一つの部屋でした。それが親子、家族のふれあいを生み、つながりを深めました。その後、家族においてもプライバシーを尊重するようになり、副作用として家族間のつながりが希薄化し、社会問題化しました。そうなのです、大きい家では非効率で薄情な空間が多いのです。
住まいにとって大切なことは、「大きさ」ではなく「住まい方」です。意識しなくても日本人は大きさへのこだわりを捨て、物理的な豊かさよりも精神的な豊かさを求めたと考えるのは私の考えすぎですかね?
私自身のことを言うと、大きい家にも小さい家にも住んだことがあります。現在は一戸建ての二世帯住宅に、妻の母と私たち夫婦と娘の計4人で住んでいます。その前は僅か16坪のまさしく「うさぎ小屋」でしたから、大きさは3倍ほどにもなりましたが、特に生活空間が大きくなったという実感はありません、いかに無駄なものが多いという事でしょう。
物が増えて部屋が足りなくなったという理由で増築をしたり、建替えたり、住み替えたいという相談をお客様から受けますが、その場合はいまいちど熟考をお願いします。工夫次第で別の解決策が見つかるかもしれません。でもこんなことを言っていると、お客様が減ってしまうので不動産業者としては失格かもしれませんね。