創業にあたり
私と不動産との関わりは今から20年以上も前になります。当時私の勤めていた会社が、某有名ハウスメーカーの地域販売店に加盟することになり、それまでは飲食店のデザインや設計及び
現場管理をしていた私もその立ち上げに参加させてもらえることになりました。少人数でスタートした為に、設計・積算・販売・土地仕入・建設・造成・借地・資金回収等、住宅関連の不動産業務については何役も責任者を務めさせていただき、携わさせていただいた物件は数百件にものぼりました。
年齢的にもまだまだ体力に余裕のあった時期でもあり、お客様にも恵まれ住宅需要が下向きになりかけていた頃であったにもかかわらずとても順調でした。
住宅の販売には競合はつきものです、私は競合に勝ち抜くために、あらゆる建築会社の商品を調査しました(建築が好きなので半分趣味でもありましたが)。一流ハウスメーカーに限らず、地元の優良工務店も含めて時間さえあれば現場を見学に行ったり、資料を取り寄せたりして自社の商品と比較研究をしました。
比較研究は商品だけに留まらず、アフターサービスや営業の体制、設計の特徴・保障の内容など、とにかく調べられるものは調べつくしました。
そんなある日、知り合ったお客様との出会いが、その後の私の考え方を大きく変えさせるきっかけになりました。
新築の住宅を希望されるそのA様と分譲住宅の契約に向けて打ち合わせをしているときに、とても大きな疑問を持ってしまったのです、それは自分が契約してもらおうとしている商品は、このA様には本当は一番の選択ではなく、ライバルの地元業者S工務店のほうが価格も安く、性能も遜色のない商品が提供できるのではないか、このまま自分と契約してもらうと、自分はひょっとしたらこのお客様に将来大きな後悔をさせてしまうのでは無いかという疑問です、結果として私は当然S工務店の商品をA様に薦めることは、会社への背任行為になってしまうので、A様は私の勤めるハウスメーカーの分譲住宅を購入されました。
それからも疑問はどんどん増えていきました、商品の内容だけでなく、販売の方法や個人ファイナンスの仕方など、今まで常識だと思って疑っていなかったことを再度見直していくとだんだん不動産業界全体の問題点が見えてきました。
当時私が販売していた商品に決して問題があった訳ではない(それどころか今でもとても良い商品だと思っています)のですが、お客様には後悔してほしくないという一念で、他社との違いをとことん説明して売れば売るほど、私はどんどんジレンマに陥るようになりました、そしていつしか疑問が不安へと変わっていったのです。
結局私は自分の気持ちを抑えることができず、そのハウスメーカーを退職することにしました、特定のハウスメーカーに在籍したままでは、公平な立場で住宅建築を薦めることはできないと限界を感じたからです。とはいえ、全く離れてしまっては住宅建築に関わることはできなくなってしまうので次にお世話になったのは不動産会社です、もともとハウスメーカーにいた頃よりお付き合いをさせていただいたその社長の会社に身を寄せて、土地探しから始めているお客様に、住宅建築会社にしがらみのない立場としてできるだけ自分の経験をお伝えして、後悔のない家づくりをお客様に薦めてまいりました。
土地活用や相続対策を主とした不動産コンサルティングを行う傍ら、ある日個人投資家のお客様から、競売にかけられた住宅の入札を依頼され、物件の調査を行った私は驚きました、その物件は以前私が担当したA様と同じ分譲地の住宅だったのです、古巣の仲間である購入当時の営業マンに事情を聴いてみると、競売になった原因はご主人の勤務先の給与カットにより収入が減り返済が滞ってしまった末のこと、もともと余裕のある返済計画ではなかったことが災いしたのでしょう。
この件以来、A様の事も重なり、中立公正な立場で住宅の品質や資金計画等の個人の住宅取得に関して特化したライフプランニングや不動産コンサルティングの必要性を切実に感じるようになり、身近に行う人がいないのであれば自分で行わなければいけないという使命感が芽生えました。
ごく一部の方を除いて「家族そろって笑顔で暮らせること」を人生の目標のひとつにしていると思います、住宅の取得はそのための手段であって目標ではないはずです。
その手段である住宅取得でつまずいてしまうと、その後の家族全員の人生に大変大きな影響を与えてしまいます、それを防ぐためには
◎人生で最大の買い物をするのにその本人以外はすべてその道のプロという、売り手と買い手の情報格差を無くすこと。
◎ファイナンシャルプランナーの手法と不動産コンサルティングの手法を、お客様の側に立って提供すること。
これらを今後の私の立ち位置とします。